コロナ禍やクラウドサービスなどの発達により、会社ではなく自宅などで仕事をするケースが多くなっています。仕事をするためのスペースが必要なくなっている一方で、事業を行う上での住所は法人・個人事業主ともに重要です。
このような場面で便利なのがバーチャルオフィスです。ビジネスに活用することでさまざまな利点があるため、需要も年々増えています。
この記事では、バーチャルオフィスの概要やメリット、おすすめの人、タイプ別のバーチャルオフィスなどについて紹介します。記事を読んでバーチャルオフィスについて知り、ビジネスに役立ててください。
バーチャルオフィスとは?
バーチャルオフィスとは、物理的な実体がない「仮想の事務所」のことです。
事業用の住所をレンタルするサービスであり、物理的なスペースを貸し出すコワーキングスペースやレンタルオフィスとは異なります。そのため、仕事をするスペースは別途用意しなければなりません。
バーチャルオフィスで利用できる主なサービスには、以下のようなものがあります。
・住所登記
・郵便物の転送
・電話番号やFAX番号の利用
・会議室の利用(有料・無料)
バーチャルオフィスを利用するメリット
ここでは、バーチャルオフィスを利用するメリットを紹介します。
主なメリットは、以下の6つです。
自宅住所を公開しなくて済む
自宅住所をビジネス上の住所としても使うと、個人情報の流出など不都合な点があります。特に女性の場合は、プライバシーをしっかり守りたいと考える人も多いでしょう。
バーチャルオフィスの住所をレンタルすれば、自宅住所を公開することなく安全にビジネスできます。
自宅住所以外をホームページや名刺に記載したい場合は、バーチャルオフィスの活用がおすすめです。
事務所を借りるよりコストが安い
実体のある事務所を借りる際、仲介手数料や保証金、敷金・礼金、前家賃、火災保険の支払いなど、膨大な初期費用がかかります。
また、レンタルオフィスやコワーキングスペースを借りる場合も、入会金や2か月分の利用料など、ある程度まとまった初期費用がかかるでしょう。
バーチャルオフィスであれば月額数千円から利用可能で、コストを安く抑えることができます。
バーチャルオフィスも入会金や保証金が必要になる場合もありますが、初期費用不要のキャンペーンやプランも存在するため、よくチェックしてみましょう。
一等地がオフィスになるため信用度が増す
オフィスの所在地が「○○アパート△△号室」と「○○ビル△階」では、印象が大きく異なるでしょう。後者の方が、しっかりした事業を展開しているというイメージを持たれやすいです。
バーチャルオフィスはオフィス街など一等地に立地していることが多いため、クライアントから信用を得やすくなります。
知名度が高く、土地柄が良い都心部の住所ならばブランディングにつながり、ビジネスで問い合わせや発注を受けやすくなるでしょう。
ビジネスにおいてオフィスの所在地は意外と重要です。相手に好印象を与えるために、バーチャルオフィスを利用してみましょう。
引越しをしても住所変更が不要
自宅住所をビジネス上でも使用していると、引っ越しのたびに住所変更の届け出をしたり、ホームページや名刺、請求書のテンプレートも変更する必要があります。
バーチャルオフィスを契約していれば、自宅住所は引っ越してもビジネス上の住所は引っ越さないため、住所変更の手間を減らすことができます。
利用料金を経費に計上可能
バーチャルオフィスの利用料金は、外注工賃や業務委託料などの経費として計上可能です。
また、バーチャルオフィスをレンタルして自宅でも仕事をする場合、事前に税務署などに届け出れば、オフィスと自宅の両方を経費計上できます。なお、バーチャルオフィスは全額計上でき、自宅は家事按分で算出します。
ファンからの荷物を安心して受け取れる
事務所に所属していないインフルエンサーやYoutuberの場合、ファンからのプレゼントや手紙などを、自宅住所を公開せずに受け取りたいと考える人も多いでしょう。
バーチャルオフィスならば、ファンに住所を教えることなく荷物を受け取ることが可能です。郵便物転送サービスもあるため、バーチャルオフィスに届いた荷物を自宅にいながら受け取れます。
自宅住所を公開してしまうと、ストーカーや嫌がらせなどのトラブルに巻き込まれる可能性がありますが、バーチャルオフィスならその心配がありません。
バーチャルオフィスがおすすめの人
ここでは、バーチャルオフィスがおすすめの人について紹介します。
以下で紹介する特徴に当てはまる人は、ぜひバーチャルオフィスの利用を検討してみてください。
副業やフリーランスをしている人
取引先が増えてくるに従い、源泉徴収や契約書類への住所記載など、住所情報をクライアントに公開しなければならないケースが増えてくるでしょう。バーチャルオフィスを利用すれば、自宅住所を伏せることができるため、プライバシーを保護することが可能です。
また、名刺やホームページにビジネス用の住所を記載できます。自宅住所を載せるより心象が良いためおすすめです。
小規模なネットショップなどの運営者
最近はネットショップで商品販売する人も増えていますが、運営する際は特定商取引法に基づき、販売者の住所や電話番号の情報を記載しなければなりません。このケースでも、バーチャルオフィスを利用すればその住所を記載できます。
ただし、特定商取引法には「現に活動している住所」という条件があるため、活動実態のないバーチャルオフィスはNGです。会議室があるオフィスや、シェアオフィス(コワーキングスペース)利用可などの条件を満たせるバーチャルオフィスを選ぶようにしましょう。
インフルエンサーやYoutuber
個人で活動しているインフルエンサーやYoutuberの中には、ショップを運営してグッズや服を販売したいと考える人もいるでしょう。
グッズを販売したり自身のブランドを立ち上げたりする際には、販売者の住所を記載することが義務付けられています。バーチャルオフィスを利用すれば、自宅住所を公開することなく安心して起業することが可能です。
事務所を介さず自分で起業することで、利益をすべて自分で管理できるというメリットもあります。
また、ファンからの荷物を受け取る際、私書箱では利用のタイミングや期間に制限がありますが、バーチャルオフィスならいつでも受け取ることができます。
起業または開業準備をしている人
一般的な事務所を借りるには敷金・礼金、保証金、火災保険費用など膨大な初期費用がかかりますが、バーチャルオフィスであれば初期費用を安く抑えて事務所の住所を借りることが可能です。
また、登記を認めているバーチャルオフィスであれば、そのまま事務所の所在地として登記することもできます。賃貸住宅だと商用利用できずに登記できないケースもあるため、自宅以外の住所を借りて登記したい場合はバーチャルオフィスの利用が便利です。
初めてにおすすめのバーチャルオフィス4選
ここでは、初めて利用する人におすすめのバーチャルオフィスを紹介します。
タイプ別に厳選していますので、目的に合ったバーチャルオフィスを見つけてみてください。
和文化推進協会
所在地 | 京都府京都市 |
主なサービス内容 | ・電話転送 ・代行 ・郵便受取 ・転送 ・法人登記 ・補助金 ・助成金情報発信 ・クラウドファンディング支援 |
入会金 | 6,000円 |
月額料金 | 500円/月 |
保証金 | 0円 |
和文化推進協会は京都にあるバーチャルオフィスで、利用料金は業界最安値の月額500円です。
シンプルなサービス内容ですが、電話転送・代行は無料で利用できます(受信のみ)。
郵便受取・転送は、1転送あたり500円+実費(郵送代・配送代)がかかります。
【こんな人におすすめ】
・費用を安く抑えたい
・最低限のサービスだけ利用できれば良い
・所在地にそれほどこだわりがない
ナレッジソサエティ
所在地 | 東京都千代田区 |
主なサービス内容 | ・法人登記 ・郵便受取 ・転送 ・電話転送、03発信 ・来客対応 ・会議室、ミーティングシート、ワークスペース ・動画配信スタジオ ・交流会、お茶会 ・法人口座開設保証制度 ・登記費用の補助 ・会員専用サイト |
入会金 | 16,500円 |
月額料金 | 4,950円/月 |
保証金 | 30,000円 |
ナレッジソサエティは、千代田区九段下駅から徒歩30秒という好立地にあるバーチャルオフィスです。
対面での入居審査があり、他の利用者に迷惑をかけそうな人物は入居を拒否するため、安心して利用できるメリットがあります。
ただし、他のバーチャルオフィスより利用料金が高めで、電話転送や会議スペースの利用に別途料金が発生してしまいます。
【こんな人におすすめ】
・一等地のオフィス住所を借りたい(大手銀行ビルに登記可能)
・割高でもさまざまなサービスを利用したい
・交流会やお茶会で人脈を広げたい
レゾナンス
所在地 | 渋谷、浜松町、新宿、銀座 |
主なサービス内容 | ・法人登記 ・郵便転送4回/月 ・屋号追加 ・03発着信、電話転送、電話秘書代行、電話秘書代行、フリーダイヤル ・FAX ・貸し会議室 ・プライベートロッカー ・法人銀行口座開設紹介(みずほ銀行) ・法人クレジットカード紹介 ・会員専用サイト、さまざまな会員特別紹介サービス |
入会金 | 5,500円 |
月額料金 | 1,650円~/月(年払い) |
保証金 | 0円 |
レゾナンスを利用すれば、都内一等地(銀座、浜松町、新宿、渋谷)のバーチャルオフィスを格安で借りられます。
プランが複数あり、住所のみ借りたい、電話転送サービスも使いたいなど、目的に合わせてプランを選ぶことが可能です。
キャンペーン価格で申し込めば、次年度以降も金額そのままで更新できて非常にお得です。
【こんな人におすすめ】
・都内一等地を借りたいが、費用は抑えたい
・20種類以上のお得なサービスを利用したい
・複数のプランから目的に合ったものを選びたい
Hub Spaces(ハブスペ)
所在地 | 全国 |
主なサービス内容 | ・住所登記 ・郵便転送 ・会議室利用 ・専用電話番号取得 ・ロッカー ・コピー機利用など |
入会金 | 0円 |
月額料金 | 利用施設により異なる |
Hub Spaces(ハブスペ)では、賃貸を探す感覚でレンタルオフィス・コワーキングスペースが探せます。
Googleのレビュー・口コミが表示されるため、比較検討しやすいのが特徴です。
全国約700か所から検索でき、バーチャルオフィスだけでなく、コワーキングスペースなども一緒に探したい場合に便利です。
【こんな人におすすめ】
・住所を借りるだけでなく、働く場所も同時に探したい
・自宅の近くにあるオフィスを探したい
・複数の候補から比較検討してオフィスを決めたい
バーチャルオフィスを選ぶときのポイント
ここでは、バーチャルオフィスを選ぶときのポイントを紹介します。
ポイントを押さえれば、オフィス選びの失敗が減るでしょう。
電話転送や留守電に対応しているか
バーチャルオフィスには、固定電話番号のレンタルや電話転送、留守電などの電話サービスがあります。「03」から始まる電話番号で信用度を高めたり、レンタルした番号にかかってきた電話や留守電を自分のスマホに転送したりなど、ビジネスには欠かせないサービスです。
住所のみしか借りられないバーチャルオフィスもあるため、電話サービスが利用できるのかしっかりと確認しておきましょう。電話サービスがあっても、月額料金に含まれている場合もあれば、オプションで別途料金がかかる場合もありますので、サービス内容やコストをよく比較検討してみてください。
郵便物の転送・受取サービスがあるか
郵便物を受け取る機会が多い場合は、転送・受取サービスがあることを確認しておきましょう。バーチャルオフィスによっては郵便転送サービスがなかったり、転送のみで直接受取ができなかったりします。
また、郵便サービスを使うには追加料金が取られたり、無人のオフィスでは書留郵便が受取できなかったりなど、バーチャルオフィスによって対応範囲が異なることも多いです。郵便サービスは月額料金内でどこまで対応してもらえるのか、追加料金はいくらかなどもよく確認しておきましょう。
バーチャルオフィス所在地が自宅から近いか
バーチャルオフィスは、自宅から近いところを選ぶのがおすすめです。
立地が近いと、郵便物をすぐに取りに行くことができ、移動時間や移動コストを抑えられます。また、会議室などを利用したいときにも、すぐに足を運ぶことができます。
最寄駅からのアクセスのしやすさなども含め、バーチャルオフィスを決めると良いでしょう。
バーチャルオフィスに関する一般的なQ&A
ここでは、バーチャルオフィスに関するQ&Aを紹介します。
疑問点をなくして、バーチャルオフィスに関する不安を解消しましょう。
借りるための審査はどのようなことを行うのか
不正や犯罪に使われるケースも多いので、多くのバーチャルオフィスでは契約前に審査を行います。
身分証明書や事業内容を示す資料、面談での印象などをもとに審査を行い、事業内容の確認や反社ではないかなどの確認をします。
事業内容が不明瞭だったり、バーチャルオフィスの利用目的が曖昧だったりすると落とされる場合があるため注意しましょう。
審査結果は即日~4営業日以内に分かることが多いです。
法人登記はできるか
結論から言うと、バーチャルオフィスの法人登記は可能です。どこの住所を登録したとしても、法律上違法になることはありません。
ただし、以下の注意点の見出しでも紹介しますが、法人登記できない業種も存在します。実体のある事業所でないと許認可が受けられない業種の場合は、バーチャルオフィスの住所で法人登記するのは控えましょう。
初期費用はどれくらいか
バーチャルオフィスの利用には、入会金・月額料金・保証金が必要になります。入会金や保証金は無料のところもあります。かかる費用はバーチャルオフィス運営会社ごとに異なり、1,000円~30,000円と幅広いです。サービス内容が充実しているほど高くなる傾向にあります。
とはいえ、一般的な事務所を借りるよりも費用が安く済みます。月額料金は数千円のところが多いので、ランニングコストもそれほどかかりません。
違約金はあるのか
「○か月以上の契約が必要」など最低契約期間がある場合、途中で解約すると違約金が発生する場合があります。バーチャルオフィスによって違約金の有無は異なりますので、事前によく確認しておきましょう。
また、解約する場合は1か月以上前に申請が必要なケースが多いです。解約する際は、更新月をよく確認して解約手続きを行いましょう。
バーチャルオフィスを利用するときの注意点
ここでは、バーチャルオフィスを利用するときの注意点を紹介します。
バーチャルオフィス契約に後悔しないために、よく確認してみてください。
一部業種では開業要件を満たさない
バーチャルオフィスでは、業種によっては許認可を取れない可能性があります。特に実体のある事務所や会社が必要とされる業種では開業が難しいです。この場合は、バーチャルオフィスの使用を諦めるしかありません。
バーチャルオフィスでの開業が難しい業種には、以下のようなものがあります。
・弁護士・税理士・司法書士などの士業
(中小企業診断士・弁理士・会計士・社会保険労務士は開業OK)
・職業紹介業
・人材派遣業
・宅地建物取引業
・金融商品取引業
・風俗業
開業要件や業種についての詳細は、各種専門家に相談してみてください。
最低契約期間がある
バーチャルオフィスの契約期間が1か月から可能としているところもあれば、プランや会員制度により、1~2年の契約が必要なところもあります。
1~2年で契約してしまうと、途中でバーチャルオフィスを変更したいときに不便です。
利用したいと考えている期間の場合、月額がいくらなのか、解約金がかかるのかなどを事前によく確認しておきましょう。
バーチャルオフィスだと気づかれることも
バーチャルオフィスを利用すると、他社と住所が重複する可能性があります。インターネットで住所を検索されたとき、同じ住所で登記された複数の企業ホームページがヒットするため、不信感を抱く人もいるでしょう。
例えば「NAWABARI」のような有名バーチャルオフィスサービスだと、17LIVER(イチナナライバー)が利用していることもあり、会社住所の知名度が高くなりやすい傾向にあります。
バーチャルオフィスであることがバレたくない人は、注意が必要です。
しかし、一方でバーチャルオフィスを上手に利用すれば、企業の成功率を高められます。バーチャルオフィスを利用するメリットとデメリットを比較し、ビジネスにはどちらが良いのかよく考えましょう。
バーチャルオフィスを契約するとメリットが沢山
バーチャルオフィスを利用することで、自宅住所を公開せずに済んだり、一等地の住所で信用を得たりなど、さまざまなメリットがあります。コストも比較的安く抑えられ、経費として計上もできるため、個人事業主ならば利用して損はないでしょう。
本記事で紹介した4つのバーチャルオフィスは、いずれも非常におすすめできるものです。コスト・所在地・サービス内容など、自分がどれを一番重視したいか考え、気になるバーチャルオフィスをチェックしてみてください。