GIFTED(ギフテッドあるいはギフティッド)という言葉をご存じでしょうか。GIFTEDとは、生まれつき神様から何らかの才能(贈り物)を与えられた人たちのことを言います。
うちの子、好きなことにはよく集中するのだけれど学校の先生と話が合わなかったり、周りの同級生とうまく馴染めないみたいなの。
一概には言えませんが、GIFTEDの可能性もあります。この記事を読んで理解を深めていただければ幸いです。
自分の子供が、不登校になったりよく先生とトラブルを起こしたりしてしまい、どうすれば良いか悩む保護者の方もいるでしょう。そのような悩みは、GIFTEDにもあります。そこでこの記事では、GIFTEDの特徴や悩み、GIFTED教育の日本と海外の取り組みと問題点、さらに日本におけるGIFTEDはどうしたら良いかを説明します。
GIFTEDとは
GIFTEDという言葉は、「先天的な強い特性(Gift)を神様から【贈られた】子供たち」という由来からきており、欧米諸国で広く用いられている概念になります。ここでは、GIFTEDの概要と特徴、才能と判定方法について説明します。
GIFTEDの種類と2E
GIFTEDの子供は、その才能に応じて、さまざまな種類に分かれます。
例えば、学校の成績が全般的に良いオールラウンダータイプの子供や、数学・空間認識能力に長けた子、一度見た絵をそのまま模写したり3歳でピアノを弾けるなど絵画や音楽に特化した子、のように様々なタイプがあります。
また、ある分野では突出した才能を持ちますが、他の分野では人並み以上に苦手な分野がある子供は2Eと呼ばれます。2Eは「twice-exceptional:二重に特別な」という意味で、GIFTEDと、LD「Learning Disability:学習障害」・ASD「Autism Spectrum Disorder:自閉症スペクトラム」などの発達障害を併発している子供のことです。
例えば小学生で大学数学の問題は解けるけれど、コミュニケーションが得意ではなく親ともうまく話せないなど、突出した能力とマイナス面の差(凹凸)が激しい子供が2Eと呼ばれます。
GIFTEDの特徴
GIFTEDにはさまざまな特徴があります。全米ギフテッド教育協会(NAGC)の、「特徴」から一部抜粋しましたので参考にしてみてください。
・問題解決への興味
・知的好奇心が旺盛
・批判的思考
・多様な興味と能力
・創造力や発想力がある
・鋭いユーモアのセンスがある
・直感力がある
・柔軟性がある
・自立した態度と行動を取る
・社会規範に無関心
・感受性が強く他の人の感情に対し共感力がある
・傷つきやすい
・理想主義で正義感がある
・情熱があり、自発性がある
・興味があることに夢中になる
・エネルギッシュで睡眠や休みが必要ない
・質問攻めをする
・好奇心が旺盛
・衝動的で熱心で元気
・重要な分野では忍耐力がある
・失敗するとかんしゃくを起こす
・おしゃべりが止まらない
また、上記のような特徴だけでなく、字が汚かったり、OE(Overexcitability)であることも特徴に挙がります。OEとは、過度激動のことを言い、ギフテッドの持つ特性の一つとされています。
OEの過度激動とは?
感受性が鋭く、喜怒哀楽が激しいことで、OEは心理学用語です。同じく敏感な気質の、HSP(Highly sensitive person:感受性の鋭い人)とも関連が深いです。
GIFTEDの判定方法
ひとつの基準として、IQが130以上あるとGIFTEDとされています。IQとは知能指数のことで、基準値が100です。90から109が平均値、110以上で「IQが高い」と判断されます。(東大生の平均IQは120前後)
ひとえにIQと言っても、専門的な機関での測定は多角的に行われます。例えば、世界的に使用されている「WISC-Ⅳ(ウェクスラー式知能検査)」では、IQを更にカテゴライズして「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4項目ごとに測定、判定を行います。
そのほか、WISC-Ⅳでは「流動性知能(fluid intelligence(gf))」・「結晶性知能(crystallized intelligence (gc))」を図ることができます。「流動性知能」は「新しい場面に適応するときどのように動けば良いのかを考え動く能力」で、ビジネスの現場で発揮できる能力です。「結晶性知能」は「過去の学習経験に基づいた判断を行う能力」で、近道などの効率的な方法を考えたりする能力が当たります。これらの能力は、GIFTEDの持つ才能と関わりがある可能性のあるものとして見られています。
GIFTEDの才能には不可測なものも
しかしながら、全てのGIFTEDの才能が既存のIQテストのみで測れるかというと、そうではありません。それは、「知能」が心理学的には「学習する能力」とされるからです。IQテストは知能を測るテストです。GIFTEDには、特定分野に突出した才能を持つ人も含まれるため、IQのような全般的な知能検査では測れない可能性を秘めていることも多々あります。
例えば、「新しいビジネスを考える」「トレンドで流行する商品を思いつく」「新しい仕組みを考える」など、前述した「流動性知能」を活用したビジネスでの活躍の可能性です。
GIFTEDたちは「IQなどの目安」として測れないような能力を秘めていることも珍しくありません。既存の指標に疑問を持ち、常識にとらわれない視座こそがGIFTEDの能力や才能に気づき伸ばす為には必要です。
私の子供は学校の成績は良くないのだけれど・・
勉強が好きでも学校の先生が嫌いで勉強をサボっていまうGIFTEDもいます。「IQ」や「学校の勉強」は目に見えて測れる1つの指標でしかありません。
TALENTEDとの違い
TALENTED(タレンテッド)は、芸術的な才能に秀でた人のことを呼び、「芸術型のGIFTED」とも呼ばれます。運動や芸術分野の才能があり、絵画、音楽やスポーツといった分野で才能を開花する人たちです。
GIFTEDが学術的あるいは全般的な才能があるのに対し、TALENTEDは芸術的な才能を持つのが違いです。TALENTEDもIQが高いことがありますが、特に芸術の方面に秀でている場合、そちらの方に着目されがちです。明確な線引きがある訳では無いので、教育関係者においても一概にカテゴライズする前に注意が必要です。
GIFTEDと発達障害との関連性
GIFTEDは、発達障害とは違います。ですが、2Eの子供も一定数いるように、併発していることも多くあります。ここでは、GIFTEDと発達障害の似ている特徴と違いについて説明します。
GIFTEDと発達障害の似ている特徴
GIFTEDと発達障害は、似ている特徴が多いため、誤診や併発が多々あります。発達障害の、GIFTEDと間違えやすい特徴を以下に挙げます。
ADHD(注意欠如・多動症)
・課題や遊びに集中ができない
・喋りすぎる
・手足をそわそわしたり、じっと座っていられない
ASD(アスペルガー症候群)
・一人で過ごすのが好き
・特定の対象に強く没頭する
・感覚過敏
・興味のないものは関心を持ちにくい
誤診や2Eのケースもある
上記のような特徴から、GIFTEDは誤診や併発(2E)が非常に多くなっています。また、逆にGIFTEDが気づかれずに発達障害と診断を受けてしまうこともあります。
GIDTEDには当てはまり発達障害には当てはまらない特徴として、リーダーシップがあることや運動・スポーツが得意なこと、他の人の感情を汲み取るのが得意なことが挙げられます。
発達障害と診断を受けたけれどGIFTEDの特徴に心当たりがある場合は、IQの検査を受けてみたりGIFTEDに詳しい専門家に相談したり、先生を変えてみることも検討しましょう。
日本のGIFTEDの子供の悩み
GIFTEDは、その特徴から同学年の環境に馴染めず悩みを抱える子供も多いです。どのような悩みがあるか、詳しく説明します。
授業に集中できない
GIFTEDの子供の中には、授業が簡単すぎてつまらないという人もいます。授業を聞かなくても理解できるのです。そのような子供の中には、授業に集中できずに他のことを考えているため注意されることもあるでしょう。それとは逆に、自分の興味のある分野には高い集中力を発揮する傾向もあります。
周りに馴染めない
周囲の環境に馴染めない場合もあります。周りの同じ年齢の子供と話が合わなかったり、逆に大人の方が接しやすかったりするからです。特にEQ(感情指数)が年相応なのに比べてIQが高いと、10代の多感な時期はうまくコントロールできない可能性があります。
また、知的好奇心が旺盛なため質問攻めをして驚かせる場合もあります。
EQって何のこと?
EQとはEducational Quotient、つまりは心の知能指数(感情指数)のことです。この指数が高ければ高いほど感情のコントロールができ、柔軟性や共感力があるとされています。
不登校になる
GIFTEDは感受性が強く繊細なため、人間関係で悩みを持ちがちです。中にはHSPの子供も一定数おり、すぐに疲れてしまって不登校になることが多いのが現状です。同年代の友人と話が合わないことも原因の一つでしょう。
また学習スタイルや感情、心理が独特で、一般のクラスでは落ちこぼれる可能性もあります。わざと目立たないように学校の成績の良さを隠すこともあります。
そのように、才能を発揮し切れない環境にいては伸ばせる才能も伸ばせず、非常に勿体のないことです。GIFTEDの子供たちをすくすくと育てる為には、彼ら彼女らに合った環境を用意してあげましょう。
このように、GIFTEDの子供たちの中には普通の学校へ行ってもうまく適応できず、自分の居場所を感じられない子ども達も多くいます。
そういった子たちの才能をより適した形で育むことができる環境を用意しよう、という考えから生まれたのがGIFTED教育です。
GIFTED教育とは
GIFTED教育とは、特別な才能を持って生まれたGIFTEDを対象にした、それぞれの特徴を活かした教育プログラムです。例えばGIFTED教育先駆国のアメリカでは、高校に在籍しながら大学の科目を履修できたり、単位も取れます。また飛び入学の制度もあります。
GIFTED教育は、日本では文部科学省で「才能教育」とも呼ばれています。「才能教育」は「エリート教育」とは違うので、注意が必要です。
なぜ日本では才能教育と言われているの?
GIFTEDの定義があいまいだからです。しばしば障害をあわせ持つ人にも使われ、人によって捉える意味が違うのです。
ここではGIFTED教育の種類と日本における「才能教育」の詳細を説明します。詳しく見てみましょう。
GIFTED教育の種類
日本では「GIFTED教育」という言葉に馴染みがないかもしれませんが、海外では盛んに行われています。例えばアメリカのGIFTED教育では、以下の4種類が有名です。
エンリッチメント方式
エンリッチメント方式は、GIFTEDの子供も普通の子供と同じ環境で過ごしますが、GIFTEDには与えられる課題が難しいものであったり、コンテストへの出場機会を設けるなど、才能を伸ばす機会を与えられます。
プルアウト方式
プルアウト方式は、普段は通常の環境で過ごしますが、GIFTEDの子供だけで集まる機会を設ける教育方法です。
ハイレベルな環境で学べるほか、GIFTEDのみの同じ知能指数を持つ子供たちとも交流できるというメリットもあり、子供たちもスムーズにコミュニケーションがとれるでしょう。
アクセルレイト方式
アクセルレイト方式は、日本での「飛び級」にあたります。同学年より学習能力が高い人に対して、1つ上の学年で学んだり卒業年を縮めたりするものです。
サマースクール方式
サマースクール方式は夏休みにGIFTEDの子供を集めて学習やキャンプをします。英国やフィンランドなどでも行われています。アメリカのサマースクール方式ではSTEMカリキュラムを学ぶことも可能です。
日本における「早修」と「拡充」の才能教育
日本においてGIFTED教育は未だ浸透しているとは言えませんが、同じような教育カリキュラムに以下2つの才能教育と呼ばれるものがあります。日本でのGIFTED教育の、参考にしてみてください。
早修
既存の学習プログラムを早期に履修、あるいは速修することです。飛び入学制度や、早期履修制度のAP(アドバンスド・プレースメント)・早期卒業などがあります。日本では飛び入学ができる大学が少数に限られますが、海外では高校在学中に大学の単位を取って早修したり、暦年齢を超える学力を持つ学生が早期に卒業したり、多様な経路があります。
拡充
拡充とは、カリキュラムの範囲を超えてさまざまな分野を学習することです。少数の才能ある生徒にだけではなく、多数の生徒に対応できるため、現在の日本の教育との親和性は高いとされています。
海外と日本でGIFTED教育が注目される背景
最近になってGIFTEDという言葉を知ったという方も多いと思います。なぜ今注目されているのでしょうか。ここでは、海外と日本でGIFTED教育が注目されている背景を紹介します。
始まりはスプートニク・ショック
もともとは、1957年、スプートニク・ショックを受けたことをきっかけにアメリカで早修型教育が開始されます。スプートニク・ショックとはソ連の世界初の人工衛星の打ち上げにより、世界中が衝撃を受けたことです。これにより危機感を感じたアメリカは、科学技術分野の人材育成の必要性を感じ、さまざまな教育計画が実施されました。
日本で才能教育の理念が登場したのは昭和から
日本では前述の通り、GIFTED教育は「才能教育」として認識されています。そもそも日本において優秀児(能力が高い子供)の教育に注目されたのは明治時代に学力格差が生まれたことがきっかけでした。それが戦争になるにつれ国家戦力を高めるという目的になり、終戦後にアメリカの才能教育が入ってきたことにより優秀児の心理や創造性などに注目が集まります。
その過程を得て、1966年中央環境審議会で初めて「才能教育」の理念が登場しました。
中央教育審議会答申においての指摘から才能教育についての有識者会議を開催
日本では現在、「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」が開かれています。令和3年1月の答申での指摘を受け、これまで学校において、特異な才能をどのように見出し、能力を伸ばしてゆくのかという議論が行われてこなかったことが見直されたのです。会議では、大学の先取り履修についてや飛び入学についてが議題に上がっています。
海外と日本のGIFTED教育の現状
日本は現在、制度認定が有識者会議で進んでいることがわかりました。それでは、GIFTED教育の教育現場の現状ではどのような制度があるのでしょうか。ここでは、海外と日本のGIFTED教育の現状を説明します。
アメリカの現状
GIFTED教育先進国のアメリカでは、公立学校にGATE(Gifted And Talented Education)プログラムと呼ばれるものがあります。認定審査を受けると専門家が試験やインタビューなどで才能の有無を判定します。認定された場合は学校内で先取り学習や、レポート作成・プレゼンテーションなどのアクティブラーニングの教育が受けられるのです。
また、政府が主導して各学校でSEMに取り組んでいます。SEMとは、「全校拡充モデル」のことで、生徒の長所や強みに焦点を当てて、得意なことや興味を深く掘り下げることで生徒の能力や創造性を伸ばす、「拡充」の教育方法です。教育学者のジョセフ・レンズーリ教授により開発されました。アメリカでは拡充専門講師の援助も実施しています。
フィンランドの現状
フィンランドでは、GIFTEDの法的定義もなく、体系的な才能教育は実施されていないにも関わらず、教育現場で暗黙知で拡充の才能教育が行われています。授業内容は個々の教員によります。フィンランドでは、基本的に同じクラス内で才能教育が行われることによって、助け合うことで「子供同士の学び合い」が期待されているのです。そのほか、サマーキャンプではヘルシンキ大学や企業と連携して特別学習が行われています。フィンランドではGIFTEDのことをskilfulと呼んだり平等主義のため、その教育方針は日本でも受け入れやすいかもしれません。
シンガポールの現状
シンガポールでは、政府主導のGEPといったGIFTED教育のプログラムがあります。小学校3年生で試験があり、小学校4年生から特別なクラスで算数、英語、科学などの拡充教育が行われます。
そのほか、イギリスや韓国でも政府が主導しての拡充・早修が行われています。
日本の現状
日本は、才能教育の一環として「飛び入学」の制度がありますが、広がっていないのが現実です。アメリカの学部入学者で18歳未満の人数は毎年約18万人(2011年度)いると言われているのに対して、日本の大学学部入学者の累積が135人です。(2019年度)GIFTEDの制度があっても一般に知られておらず、活かせていないのが現状です。
ただし、科学技術振興機構がSSHやジュニアドクター育成塾を設置するなどSTEM教育や理数教育を充実させようという動きはあります。
日本は取り組みがないのではなく広まっていないだけなのね
日本にも早修や拡充に取り組んでいる団体はありますが、いずれにしても国の政策が少なく海外から遅れをとっているのは確かです。
海外と日本のGIFTED教育の取り組み事例
海外では、アメリカのような先進国からGIFTEDの定義からあいまいな国まで様々です。実際の国内外のGIFTED教育の取り組み状況を見てみましょう。
海外の取り組み①アメリカ
アメリカでは、カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校でEEP(Early Entrance Program)という早期入学プログラムを実施しています。入学後は一般の学生と同じクラスで学びます。
また他にも、1979年に設立されたジョンズホプキンズ大学の才能児の教育機関である、CTYプログラムが有名です。提携大学を会場にした、「拡充」を強調したサマープログラムです。世界中のGIFTEDの子供を対象にしていて、オンラインプログラムには歌手のレディー・ガガ、Facebook(現Meta)のマーク・ザッカーバーグも参加していたと言われています。
さらに非営利団体カレッジボードが実施するアドバンスド・プレースメント(AP)という制度もあります。いわゆる「大学の単位の先取り」です。高校生が大学1〜2年次のレベルの科目を受講し、成績の認定を受ける制度で、修得した単位は入学後に必須単位して計算されます。6割の高校で開講しており毎年約120万人の生徒が受けています。
海外の取り組み②イギリス
イギリスでは、GIFTED教育において政府からの補助金制度があります。ウォーリック大学において、IGGY(International Gateway for Gifted Youth)が設置され、GIFTED向けの夏季コースやオンライン学習教材を提供していたり、民間の団体ではNACE(全国才能児教育協会)と呼ばれる機関がGIFTEDの保護者や教員のサポートなどを行なっています。
海外の取り組み③ドイツ
ドイツでは、州ごとに独自の取り組みが行われています。例えばバイエルンでは、言語や音楽、数学などさまざまな特別授業が行われています。一部の州ではSEMモデルが活用されているのも特徴です。
日本の取り組み①LEARNプロジェクト
不登校の学生向けに、「異才発掘プロジェクトROCKET (ロケット)」を展開していた東京大学先端科学技術研究センターの新しいプログラムです。幅広い子供たちに参加できるもう一つの学びの場を目指して設立されたプログラムです。サバイバルキャンプや日本文化の学びなど、日本各地でさまざまな課外活動が展開されています。プログラムによって参加条件が違うため、確認が必要です。
日本の取り組み②翔和学園
翔和学園では、才能を伸ばすためのGIFTED教育をギフテッド・クラスを設けて行なっています。対象は、IQが130以上で2Eの子供たちです。内容は、個人学習などでテーマを決めて発表したり、美術館や工場施設などに実地見学に行き興味を刺激するようなものとなっています。
日本の取り組み③ギフテッド応援隊
ギフテッドの子供を持つ親の、全国規模のコミュニティです。SNSによる会員交流や、勉強会・お茶会なども開催しています。
日本の取り組み④日本ギフティッド協会
日本ギフティッド協会(Japan Association for the gifted:JAG)はNPO法人である、Feelosopher’s Path Japanが運営している協会です。GIFTEDの子供たちがその才能を開花し、能力を周りや社会の人のために使い意味のある人生を送ることを目指すことを目的とした協会です。定期的にGIFTEDの子育てを支援するイベントや会議を開催しています。
わたしは5年ほど前からこちらの団体と交流させていただいており、もし興味ある方がいらっしゃいましたらお繋ぎすることも可能です。ご希望の方は、各種SNSもしくはこちらのメールアドレスよりご連絡ください!malmal0v0@manumaruscript.com(アットマーク半角)
また、代表の今瀬さんの個人ブログも高頻度で更新されているのでオススメです。
日本におけるGIFTED教育の問題点
日本は前述した通り海外から後れを取っていますが、それでは普及するための課題には何があるのでしょうか。詳しく説明します。
GIFTEDの認知度が低い
GIFTEDの認知度が低く、不登校になっても気づかれにくいことが問題です。GIFTEDの子供は同年代の子供と馴染みにくく、不登校になることもしばしばあります。
全米ギフテッド教育協会(NAGC)によると、アメリカでの公立学校のGIFTED教育対象者は約6%と言われています。日本でもその程度の割合のGIFTEDがいてもおかしくありません。
国として体系的なGIFTED教育(才能教育)がない
日本では政府が主導してのGIFTED教育がありません。それはフィンランドなどでもあることなのですが、海外の他の国と違うのは他の国では個々の先生により拡充の教育が行われているのに対して日本の場合は拡充の概念も広がっていません。
体系的にGIFTED教育を実施するには、まずは実際にGIFTEDの子供がどれくらいの割合でいるのかの調査をしたりGIFTEDの困りごとや要望を把握したりする必要があります。今後の才能教育についての会議が重要になるでしょう。
GIFTED教育を受けられる機関が少ない
GIFTED教育は、日本においては才能教育とされ、「早修」と「拡充」がメインです。これらの教育を受けられる機関が少ないことが問題です。前述の飛び入学制度に関しても、日本で受け入れを行なっている大学は千葉大学や名城大学など数校程度です。令和3年の場合は8校しかありませんでした。
日本におけるGIFTEDの子供はどうしたら良いか
それでは、日本においてGIFTEDの子供にはどういった対処をすれば良いのでしょうか。詳しく説明します。
専門家や教育担当者に相談する
GIFTEDの特徴があればまずは専門家や教育担当者に相談しましょう。
GIFTEDは日本の子どもの教育機関にとって比較的新しい概念のため、教育支援センターや児童相談所、子ども家庭支援センターなどではなかなか対応できないと聞きます。
専門家やGIFTEDに詳しい先生に相談し、IQテストを受けてみるのも良いでしょう。また、私たちもGIFTEDの相談を承っています。
その分野の専門家に相談することがGIFTEDの子供たちのためにもなるでしょう。
子供の特性に合った勉強方法を考える
子供の得意な分野を活かせる勉強方法を考えることも有効です。
例えば、2Eの場合、同時処理に強く、継時処理に弱いという特徴を持つ子供が多いです。一度に複数の情報をまとめるのが得意で、情報を一つずつ連続的に与えられたものをまとめるが苦手なのです。つまり、板書による情報処理が得意で口頭によって伝えられたことの情報処理が苦手という特徴があります。そのため、図やイラストなど視覚情報を活かした勉強方法が必要になるでしょう。
2Eの場合、図やイラストを使って勉強した方がいいのね
人によっては視覚より聴覚からの情報処理の方が得意な子供もいます。その子の特徴に合わせた勉強方法を考えましょう。
家でできる勉強法を実践する
アメリカでは、学校に行かずにホームスクールでGIFTEDが勉強することもあります。アメリカではホームスクール用プログラムが充実しているのです。
日本でも家で実践できる勉強法が、SEMです。コネチカット大学大学院の知久さんが「おうちSEM」という勉強方法を提案されています。おうちSEMの方法を簡単に記載しますので参考にしてください。探究学習などを取り入れる点で、今注目されているSTEAM学習と準ずるところがあるでしょう。
STEAM教育については以下の記事で紹介しているので、ご覧ください。
おうちSEMは、以下のようなステップで行っていきます。
①興味関心を見出す
「好きなこと」をリストアップしてみましょう。
②興味を持つことについて「リアル・プロブレム」を探す
問いや課題のテーマを探します。研究課題を見つけるような感覚で、既存の解決方法がない問いを探しましょう。
③「リアル・プロブレム」をどのように解決するか計画を立てる
解決方法を見出すまでの計画を立てます。発表までの時間を区切って、何がわかっているのか、何の情報が必要かを書き出し、計画を立てましょう。
④必要なスキルを磨き、知識を深める
子供の探究のフェーズです、親は、必要な資料を提供したりタイムマネジメントをするなど、子供のサポートに徹しましょう。
⑤発表する
探究の成果を発表します。プレゼンテーションをおこなったり展示会を開いたりします。できるだけ第三者にみてもらい、多くのフィードバックを受け取りましょう。
⑥良かった点や反省点を振り返る
子供と一緒に振り返りをします。
おうちSTEMの他にも、「得意なことをどんどんさせる」「苦手なことを無理にさせない」など、家庭での接し方を変えるだけで才能が伸びていくだけでなく、GIFTEDにとって心の支えとなります。
「何かを学ばせる」よりも「居心地の良い環境」をまず、用意してあげましょう。
GIFTED教育が充実している国へ留学させる
余裕があれば一番おすすめする方法が、GIFTED教育が充実している海外へ留学させることです。日本はGIFTED先進国のアメリカと比べれば、GIFTED教育が充実しているとはお世辞にも言えません。
全米ギフテッド教育協会(NAGC)によると、アメリカのGIFTEDで飛び入学制度を利用して満足していると回答した子供は71%いるという結果があります。また、大多数が「さらに上のことを学びたい」と回答したということです。
GIFTEDの才能を伸ばし、充実した学生生活を送ってもらうためにも、制度が整っているアメリカなどのGIFTED教育先進国へ留学させることをおすすめします。
なんとかして才能を伸ばしてあげたいのだけど・・
まずは専門家に相談してみましょう。私たちも承っています。お気軽にご相談ください。
【まとめ】GIFTEDのことでお悩みならまずは相談を
GIFTEDの特徴と、GIFTED教育の現状や取り組み事例・課題から自宅でできるGIFTED教育まで紹介しました。
決して「GIFTEDなら恵まれた才能があるからその後の人生順風満帆」という訳ではなく、その突出した才能のせいで、不登校になりやすく悩みを抱えやすいという面や、同世代の子以上に与えられた環境にストレスを覚え、適合できぬまま発達障害と誤診されるなど生きにくく、苦労することも珍しくありません。
良い種があっても、それに見合う苗床を用意してあげないと、その才能は開花せずに腐り果ててしまいます。
WISCのような世界的に評価されている知能検査であっても対人恐怖の人は安定した測定が出来ないので相対的にIQのスコアとしては出にくかったり、あるいは逆に他の得意分野に比べ不得意なことを「発達障害」と本人が思い込んでいるだけで、人並みであることに(半ば無自覚に)認知バイアスがかかり悩んでいるケースもあります。
彼ら彼女らに向き合う為には、定型的な質問による項目の数値化ではなく、本人ひとりひとりに向き合った「対話」が何よりも大切です。
GIFTEDに関する相談は私たちも承っています。
(私は主に、プログラミング技術や工学、芸術領域などSTEAM教育に近しい領域が専門です)
よく、「ギフテッドは自閉症が多いと聞いたのだけど?」や「知能検査でIQ130以上出ないとギフテッドじゃないの?」という質問が寄せられることがありますが、それは一般論であって必ずしもそうという訳ではありません。
繰り返しにはなりますが、あくまで指標です。
周りの大人達には自閉症に見えていても、本人が話したがらないだけで会話能力自体は実は一般成人に匹敵しているケースすらあります。
アメリカではGIFTEDはもともと「教育分野」の概念であり、そもそも「医療分野」の自閉症や発達障害とは使用目的が異なります。しかし、発達障害の疑いなどから病院で知能検査の診断を受け、その結果一部の傑出した才能が判明し、GIFTED教育に転向させるといった流れが多いのが実情です。
そのような背景もあり、ギフテッドや発達障害という概念自体がとても曖昧で、医療や教育の現場でも混同されがちです。医療従事者は教育のプロフェッショナルというわけではなく、また、教育関係者も医療のプロフェッショナルではない為、現場の人々の中でも非常に間違われやすいのです。(こちらのケイ父さんのGIFTED概念に対する考察などは非常に面白いので、一見の価値アリです✨)
以上のことから、我々は特定の指標のみを頼りにするのではなくより抽象的な特徴を本人から感じ取れるかどうかを含め、実際に会ってみて判断するようにしています。
ギフティッドの特徴に心当たりがあり、悩んでいたり詳しく話を聞きたいという方は、ぜひ一度各種SNS、もしくはメールアドレスよりご相談ください!
少しでも、皆さんのお力になれればと思います。