![Make: Japan on Twitter: "[Maker Faire Tokyo 2022]注目出展者紹介 #1 ― 世界初の「自作MRI」を8年かけて作り上げた八代さん|“各装置はほぼすべてが手作り。特注したのは主電磁石と制御ユニットに使った鋼板、勾配コイルの基板くらいで、後は既存の電子部品や材料で ...](https://manumaruscript.com/wp-content/uploads/2023/03/image.jpeg)
こんにちは、まるです。
今回は、昨年その存在を知ってから常々お話を伺いたいと思っていた「自作MRI」の八代さん(@Yashiro)と念願のお話をするに至ったので、インタビュー形式でお伺いした内容についてご紹介していきたいと思います。
インタビュー

今日はよろしくお願いします!

よろしくお願いします。
作ろうと思ったキッカケ

MRIを自作されてるということですが、キッカケは何だったんでしょうか。

高専の時に医療福祉工学コースに所属していて、医療工学という授業があったんですが、その中で4年生ぐらいの時に工学的なMRIの原理について習う授業がありまして。
他の機器も一通り習うんですが、MRIが全体的にテクノロジーとして秀でていて、技術のこだわりが他と比べ物にならない程ヤバいと感じたからです。

これいつか作れたらインパクトでかいだろうな~と思って、まずは机上の計算から始めました。

なるほど。。高専ってそんな授業もやるんですね、スゴイ。
計算はどのくらいかかったんですか?

4~5年くらいでしょうか。

4、5年!??

やってる最中に、「これ無理かもな」とか思う場面はあったんでしょうか?

諦める、っていう発想はなかったですね。
信号が得られるだけで画像にはならない、かもとは
なったけどやめようとは全く思えなくて。
難しい部分はありましたが、そこは面白さのほうが勝っていて
どうクリアするかワクワクしていることのほうが多かったです。

はぇ~。。

純粋に技術的に難しそうだからチャレンジしたい、って想いもありましたし、
これ出来たらいろんな人から注目浴びるぞ!っていう欲がなかった訳ではないです。(笑)

(笑)

逆に「これイケる!」と目途が立ったタイミングはいつ頃だったんですか?

これいけるな、って思ったのは2018,2019年(計算を始めて4年)くらいですかね。
電磁シミュレーターを作るようになって、計算をうまくやってったら理論上は信号が出るぞ、ということになって。

なるほど。最初の内はじゃあずっと、出来るかわかんないけど面白いからやろうという感じでひたすら計算してたんですね!

そうなりますね。
長年諦めきれなかった趣味が本格化

そもそも、高専に行ったキッカケとかはあるんでしょうか?

う~ん。
特にこれという大きなキッカケがあった訳ではないと思うんですが、
もともとモノづくりがすごい好きで。

ほうほう。

MRIも、暫くは趣味としてやっていたので(今も趣味ですが)、
当時は大学4年次に編入してそのまま、専攻は「パワーエレクトロニクス」という分野で主に変電所や変圧について学んでいましたね。

本業もそっち系で、主に電子回路設計をやってます。
まだ務めて4,5年になりますが、大電力を変換する基盤をつくってるので電気系の知識はそこから活かされてます。

なるほど~。元々MRIに興味があったというよりは、そういった電気や工作系に興味があって、長年趣味として続けていた感じなんですね。

そうですね。
ただ、大学の時に出会った衝撃は忘れられなくて、いつかずっと実装したいなと思って計算は続けていました。

熱意がすごい..。
MRIのすごいところと、自作の現状

MRIって、学校で習った他の機器と比べてどういった所が秀でていると感じたんですか??

まず、MRIってすごい強い磁石をつかうんですよ。
1.5テスラとか3テスラとかの磁力の。
これが人間をすっぽり覆うって中々トンデモナイことで。
更に、その上で原子核から取れる電磁波の信号はとてもちっちゃいんです。

ここから、逆FFT(フーリエ変換)をかけていくような作業が、
とてもオーパーツみたいに感じて。これつくれたらとすごいな~と思いました。

はぇ~。

(1.5テスラってどのぐらいとんでもないんだ..?
助けて、イーロン・マスク!)

最初にMRIでの現像に成功したのはいつ頃なんですか?

ちょうど去年の今頃(2022年の2月ごろ)に、自分の手で現像に成功しました。

なるほど、ちょうど最近実を結んできているのですね!

そうですね。

MRIというと個人的には脳、というイメージがあったんですが、手でやったのには何か理由があるんでしょうか。

やはり計測しやすいからですね。頭部全体を入れてやるとなると、サイズ的に数倍大きなものが必要になりますし、片手ならもう片手で観測作業などもできるので。

成る程です。
私は脳が好きなので、八代さんのホームメイドMRIで脳がスキャンできる日が待ち遠しいです。(笑)

そうですね、ゆくゆくは脳で、とは考えていますが、諸々の課題から今は手での装置完成を目先の目標にしています。

分かりました。(しょぼん)

手をいれるだけなら100万以下に抑えられますが、頭部を入れるとなると200万は必要になってしまうんです。

成程。だいぶ変わってくるんですね。

そうなんです。

今は部屋の磁石が総計120㎏になってきていて、
ホームメイドMRIの為に床の強化か引っ越しを考えています。

120㎏の磁石が室内に転がっているのがすごい。(笑)

流石にそれだと大袈裟な装置になってくるので、
顕微鏡型など今方向性を検討調整している所です。

なるほど。。
同じような開発をされている機関に対し焦りなどはあった?

続いての質問で、長年制作されてきている中で他に似たような取り組みをされている、個人や機関などはあったんでしょうか?

大学でいえば、ハーバードなどが莫大な研究費をあげてMRIの制作をやっていましたね。1000万ぐらいだったかな。ただ、あちらは部屋丸ごと用意して、って感じで設計思想がそもそも異なるもので、私のホームメイドMRIとは費用や精度とかからしても別物、って感じでしたね。

なるほど~。確かにそれだと既存のMRIと金額規模的にもあまり変わらないような気がしますね。少なくとも個人では買いづらい。

あとは一人だけ、私と別に個人でMRI作ろうとしてる人もアメリカにいました。
そちらの方はX線CTを自作成功されていた方で、最初のほうは記事を追っかけていたんですが、途中から記事が更新されなくなってしまって。
2年ぐらいやってたみたいですが、やはり難しかったのかなぁ。
2017年くらいだった気がします。

おぉ、、そうなんですね。

脳波でも電極の自作DIY界隈とか海外で十数年前からあったりするのですが、かなりニッチな界隈の栄光と挫折を垣間見たような気がします。。

自作MRIをやっていくうえで、長年かかると把握されていたと思うんですが、焦りとかはありませんでしたか?

正直結構ありましたね。日夜「MRI自作」でggってました。

ようやくちょっと普通の人間味っぽいところが聞けて安心しました。(笑)

(笑)

でも日頃から時間注いで作ってたんですもんね。そりゃそうですよね。

毎週、どれぐらいの時間をMRIの制作につぎ込んでいたんですか?

どれぐらいなんでしょう。
一番の趣味としてやってた感じなんで、わからないです。。

おお..。
では逆に、プライベートな趣味では他にどんなことを?

写真やスキーとかですかね。

なるほど。自然と触れ合ったり、ゆっくり出来る時間、という感じですね。
ちなみに私もスキー大好きーです。

…。(笑)

すみません。高周波ノイズとしてスルーしてください。

今度是非一緒に行きましょう。

ありがとうございます。(笑)
在野研究では一人の時間をすることが時間確保の秘訣

スキーや写真はそういった趣味繋がりの人と行くことが多いですが、
でも確かに言われてみれば一人の時間も結構大事にしているかもしれないです。

MRIの制作なんかも、一人の時間でないと中々進められなかったので。

確かに。そうですよね。

今もMRIはおひとりで制作を?

いえ、それが最近はTwitterのフォロワーさまに
研究職の方などが増えてきてくれていまして、
共同研究の話があったりして、大学でお話し
があったりと絡む機会が増えてきましたね。

やっぱりMakersの注目出展者紹介記事などで沢山の人の目に触れるようになった、等のキッカケが大きいんでしょうね。改めて、おめでとうございます!

ありがとうございます。

これまでも、自作MRIをやっているよ!
という発信はして来られていたんですか?

ほとんどしていないですね。
自分のTwitterの呟き程度で、
あまり形にみえるようなものとしては
発表してきていません。

なるほど。それはやっぱり、目に見える形まで持ってきた方が色んな人に伝わるからでしょうか?

そうですね。「自作MRIをつくっています」で
計算だけしていたら、インパクトも弱いですし
机上の空論と捉えかねないので。

今までの努力、お察しします。

ちなみに4月に出展予定のMakers Fair Kyotoでは、
実際に来場者の手をMRIで現像する形での出展を
予定しています。

すごい!
着々と進められていますね。

頑張ります。

ひとつ質問で、最近在野ではない研究者の方々と繋がる機会が増えてきたとのことですが、自作MRIに関して否定的な意見に出会うこともありますか?

脳波界隈だと、医学出身の方は「頭皮脳波じゃ実用化はムリ!」、工学出身の方なら「いける!」など意見割れすることもあったりするのですが。

いまのところ、一度もないですね。
むしろ皆さん、こうしたら良いんじゃないかと
色々とアドバイスをくださって、助かってます。

中には仲良くなった研究者さんで、
「研究室(ウチ)で余ってる造影剤あげるよ」とくれた方もいました。
その方とかは、いまもTwitterでよくやり取りさせてもらってます。

そうなんですね、良かったです。
造影剤。(笑)
自作MRIのリアルタイム性について

あ、あと一点、MRIについてお聞きしたかったのですが、リアルタイム性についてはどのぐらいあるんでしょう?

生体情報に連動したインタラクティブアートを作っているんですが、八代さんが制作しているMRIも使えるなら使ってみたいなと思って。

リアルタイム性はもたせられなくはないといった感じで、
一番はやく撮影できたとしても50mSecとかになっちゃいますね。
原子核の応答速度として、原理的な限界があって。

そうなんですね。

ただ、データ量が結構大きいです。
テキストベースで、7分で50MBとかいっちゃうので。

なるほど。EEG(脳波)のcsvデータも8ch、サンプリング周波数120Hzとかでそれくらいなので、サイズ的には同じくらいかもしれません。

あとは、フォーマットも自分専用のデータ構造に設計してるので、
バイナリで読み込んで扱う必要があります。
50MBのほとんどがノイズなので、そこから解析・除去していく感じです。
ただ、
開いてもちょっと自分でないと何がどこに書いてあるか
わかりづらいかもしれません。

それでもよければ差し上げます。

フォーマットも自作されてるんですね。(そりゃそうか。)すごい。

脳磁気のフィルタリングはやったことないので調べながらになりますが、
是非、脳磁気を撮った際にはデータ拝見させていただきたいです。(笑)
環境ノイズについて

そういえば、自室で制作されるにあたって環境ノイズとかは
やはり結構苦慮されているんですか?

そうですね。近所に電波法準拠してないんじゃないかという
家電機器があって、よくノイズが飛んでくるので
稼働してない夜中に測定したりしています。

ええ。。(困惑)

周波数的に、多分エアコンとかなのかと。。

なるほど、、目に見えないとやっぱり、意外と気付かないもんなんですね。
同じようにこれから研究開発を志す方へ一言

最後に、同じようにこれから研究や開発など、野心的なチャレンジをされていく方に向けて、一言アドバイスを頂けないでしょうか!

そうですね…。個人的には、何か大きな物事をやるなら
シミュレーションしてモデルベースでやってからのほうが
いいかな~と思います。

シミュレーションですか。

はい、理論に厳密に基づいたものであれば、こうすればこうなる、って
説明の部分には絶対の自信を持てると思うので。

何かを突き詰めていく中では、結構大事な指針になるんじゃないかと。

成る程です..!
私もシミュレーション足りてない所だらけなので、肝に銘じておきたいと思います。。

長くなってしまいましたが、
八代さん、この度はインタビュー快諾いただきありがとうございました!

いえいえ~、またいつでも。
こちらこそありがとうございました。
終わりに
というわけで、予定していた1時間を大幅に超過し、色々な質問に付き合っていただきました。
その他の八代さんへの質問については、Matlabなどの研究シミュレーションソフトを販売されている以下のMathworksさんのブログにて、取材されていますので是非チェックしてみてください。
また、私も自室で10~30kΩ以下の抵抗値で高精度脳波の取得実験をしている旨をお話したら、お部屋の磁界ノイズ測定に使用しているこちらを紹介していただきました。
スペクトラムアナライザとして磁界ベースで干渉してきているノイズが周波数別に読み取れるようです。
便利だけど、対応周波数範囲50kHz~とあるから脳波と同じ低周波帯の雑音は取れないっぽい。。?
環境の電磁ノイズについては学習不足なところも多いので、まぁ買って色々試してみようと思います。
本当にお忙しい中、八代さんわざわざありがとうございました!
また、この記事を読んで自作MRIと八代さんが気になった方は、八代さんのTwitterをフォローしておくと日夜の頑張りが見られるので、是非フォローしてみてください!
最後に、この記事を最後までお読みくださった皆さんも、ありがとうございました!
ではまたの機会に~。
※幣ブログでは現状脳波カテゴリしか取り扱っていない為、内容は「脳磁気」に関するものですが、記事カテゴリ的には「脳波」となっています。悪しからずご了承ください。