世界初!?はんだ用卓上リフロー炉で「リフローたこ焼き」は調理できるのか

「これ、焼けんじゃね?」

― 誰かの一言で始まった、はんだ用リフロークッキング。

これは今は亡き、秋葉原のdmmさん主催の某モノづくりコワーキングスペースでひっそりと、けれども盛大に行われた、熱き.makerたちの闘いの記録である。

世界発!?リフロー用器具で行うたこ焼きクッキング

秋葉原の某モノづくりコワーキングに突如として現れたタコヤキ未来研究所のタコさん(@tako_no_boken)。

彼の目標は宇宙で美味しいたこ焼きを調理すること。
その為に宇宙ビジネスコミュニティに入ったり、色んな人に美味しいたこ焼きを届けるために世界一周したりしてるそうな。

そんな彼と出会ったのは、冬晴れの気圧配置に油断したサラリーマンたちの指先が春一番で大きく冷え込む、2月中旬のことだった。

こんなに冷える日は、リフロー路で暖炉を組むに限る。それがAKIBA流エンジニアの節電スタイルだ。どれだけ寒かろうと、この流儀だけは譲れない。
ちょうどその日、秋葉原にて伝説のFRISKおじさんの生前葬が行われていたこともあり、施設はそんな思いを抱えた多くの人で溢れかえっていた。

誰かが言い出した。

「あー寒い。なんかたこ焼き、食いてえなぁ。」

今思い返せば、世界を旅しているタコさんがこの場所に立ち寄ったのはきっと、偶然ではなかったのだろう。会員同士の交流が活発なこの.makeで彼らが邂逅を果たすのは、もはや時間の問題であった。

暖炉を組んでいたエンジニアの一人が言う。

卓上リフロー炉で出来ないかな

「え?」

「タコだよ。タコ焼き」

「ゑ?(2回目)」

当然の反応だ。本来であればこの反応が連続し、イノベーションの種は淘汰を余儀なくされる。

しかしここは天下の秋葉原。そんな常識的な反応をしていると、ここは生き抜けない。

「GPT、たこ焼きの調理温度(AIに聞き出す)

「設定温度上の表記はいけるけど、表面への熱伝導率がわからないでヤンスよ(材質を調べだす)

(俺のリフロー炉じゃないし)まぁとりあえずやってみようぜ!」

「どうせもうちょいでCLOSEだしな!!(悪ノリ一人目)
*当時、そのコミュニティは大人の諸事情により閉鎖まで残り2か月と少しの期間を余儀なくされていた

「やろうやろう!(悪ノリ二人目)」

「デュフフww(フォカヌポウ)」

「取り敢えず持ってきたぞ!(私物が現場にSETされる)

「うし、じゃあ具材ハナマサで買ってくるわ!!!(真に受けたバカ行動力の化身)」

と始まる連鎖反応。

こうなると、もう誰も引き返せない。

時すでにお寿司、もはや誰も「冗談だよw」などと言える雰囲気は既になく、瞬間的起電力で誤動作してしまったソレノイドのように皆突発的にそして半ば暴走的に各々の責務を全うせんと動き出していた。

男たちの熱い挑戦が始まった。

左手の躍動感からも技術者の興奮具合が伝わるだろう

エンジニアとグルメの世界が衝撃的に融合!

技術者の実験精神とグルメへの情熱が融合した今回のプロジェクトはこうして幕を開けた。

はたして、電子部品を溶かすために開発された高温の炉で、伝統的な日本食「たこ焼き」を作ることは可能なのかー。

男たちの頭の中にそのような疑問は既になく、あるのは具材も買っちゃったしもう自分だけ引き返せないから焼くしかないー、その一心で彼らの想いは団結していた。

しかしながら、彼らの名誉の為に少しだけ補足するならば、この独創的な試みはただの悪ノリキッチンハックではない。料理とテクノロジーの境界を拡張する試みであり、およそ大多数の人が意識せず使う中で、人々の生活を陰ながら支え続けているアナログ回路の制作に欠かせなかった「高度な温度管理技術」が「タコを焼く」という完全異種格闘技で活躍できるのか。むしろその高度すぎる技術は、今まで可能性の蓋を閉じられていただけで本当はもっと色々な分野、ご家庭で色々な活用法が見いだせるのではないかー。むしろ1家に1台あってもいいのではないかー。

そんな問いかけを凝り固まった常識に投げかける、持ち前の発想力と行動力が無意識に活用された半ば自然発生的な、この時代に必要とされることで生じたパラダイムシフトへの転換点<いりぐち>なのである。

こうしちゃいられない。乗るしかない、このBigWaveに。そう感じた私も、圧倒的参加者という数の暴力の前に打ちのめされんとするタコを救う為、代理具材となる冷凍シーフードミックスを求めに1Fのファ〇リーマートへと急ぎ足を運ぶのであった。

油を塗って調理開始

ノリと勢いでやってみた

皆さんも御託はいいから早く画像と思っているだろうし、私も段々とこの誰得な文章を書くのに嫌気がさしてきたのでここからはサクッと進めていこう。

ちくわ(の画像)しか持ってねぇ

取り敢えず320℃セットして調理開始。
(興奮のあまりタコの画像がなく、ちくわしか持ってなかった)

待つこと十数分。。。

いけたぞおおおおおおおお!!!!!!!!!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!

テイスティング

めっさうまい。

画像詐欺になってしまうので暴露するが、こちらが本物のタコ焼きである。

え?じゃあさっきの画像のは何かって?

よく見てほしい。完全な球体じゃないことがおわかりいただけるだろうか。

実はそれ、餃子である。

焼けて丸まる前は完全にただの餃子

急遽持参されていた餃子も「リフロー炉のほうでやけんじゃね?」となり勢いで押し込んで出来上がってしまったものである。

その時の私の心境が冒頭に乗せたテトリスなのだが、あの画像通り無理と思っていてもねじ込んだらいけた。人生、やってみないと分からないものだ。

丸めた餃子はもはや芸術品といっていい程の完成度で、こちらもタコ焼き同様抜群に旨かった。なんだこれ。リフロー調理ってこんなに有なのか。これもう商品化できるぞ。

美味しそうに頬張る某Sニー技術者(今回のイベント主役)。そしてAKIBAのスタッフ、会員たち。

リフロー炉で焼き上げたたこ焼きは、見た目上の芸術点も去ることながら「はんだ付けを行うはずの機械で調理をしてしまった」という背徳感が、その食欲を更に高ぶらせゆく。

外側は予想以上にカリッとしており、従来のたこ焼き器にも劣らないカリカリ感。そしてこのほど焦げ色と香ばしい香りが、その完成度を際立たせている。この究極的ともいえる芸術品は、リフロー炉の均一且つ精密な加熱がもたらしたと言っても過言では無い。

テイスティングでは、丁寧にそして均一に加熱された具材がしっかりと味のハーモニーを奏でており、生地のカリッとした食感が特に印象的だった。リフロー炉での調理がたこ焼きの味にどのような影響を与えるのかは事前に予測が難しかったが、結果として非常にポジティブな反応を得ることができた。

【技術解説】リフロー炉と通常のたこ焼き器の違い

リフロー炉とは、主に電子工作で使用される機器で、PCB(プリント基板)上の電子部品を一定の温度曲線に沿って加熱し、はんだを溶かして部品を固定するためのものです。このプロセスは、非常に精密な温度管理が必要であり、一定の温度範囲を維持することで、部品や基板を損傷から守ります。(少しでも温度が高かったり、低かったりするとはんだがとけすぎて固まらなかったり、とけなかったりする)

一方、伝統的なたこ焼き器は、直接加熱される鉄板で生地を焼き、内部が柔らかく外はカリッとするような食感を熟練の職人の肌感覚で管理しています。

この二つの機器の最大の違いは、美味しいたこ焼き作りに欠かせない、「火力」が定量的に管理できているかという点です。リフロー炉では、台の下部分に温度の表示及び調節ボタンがあり、ボタンひとつで温度を1℃単位でコントロールできるという利点があります。

美味しいたこ焼きという「レシピ」を再現性のある手順、即ち学会の「論文」と同じ目線で評価するならば、常に同じ火力を出力、設定、維持出来るリフロー炉のほうに味の再現性として確実に軍配が上がります。

職人さんの手感覚肌感覚で行った場合、お店で焼く人が変わる毎に味や食感が異なってきます。
「あそこのタコ焼きが美味しかった」と思い店に行っても、店主が変わっていて同じ店名なのに全然タコ焼きのスタイルが変わってしまった、という経験が大阪人なら一度はあるのではないでしょうか。

それだけではありません。
リフロー炉ははんだを溶かすために数百度の温度に達しますが、たこ焼きの調理に必要な温度はそれよりもずっと低く、通常は200℃〜高くても250℃前後です。

逆に言うなら、「今までの常識に囚われていたタコ焼き」をその火力上限から解放【= 限界突破 】することで、新たなステータスを獲得出来る可能性を秘めているということです。例えば、より外だけカリッと、中はふわっとしたたこ焼きが深化を遂げ、まるで濃厚な出汁を取る○○家系ラーメンや直火焼きチャーハンのように、「たこ焼き」一つで奥深い食ジャンルが新規開拓される発展の余地が示されました。

こうしたメリットの連続に狂喜乱舞するエンジニアたちでしたが、当然いいことばかりではありませんでした。たこ焼き器は手動で丸めた生地をひっくり返すという作業に特化していますが、リフロー炉ではこのような物理的操作は不可能だったのです。いやそりゃそうだろ

その為、タコ焼き用の鉄板プレートを使い、リフロー炉の精密な温度管理機能を利用してたこ焼きの生地が均等に加熱されるように挑戦

しかし、接面積が少ないのかリフロー炉は熱くなるも鉄板プレートが同等の温度に達するのにはおよそ15分以上の時間を要しました。

なのでこちらは、金属破片のジャンクボックス(ゴミ箱)を漁り熱伝導率の高いアルミファンが奇跡的に捨てられていたことからそれをひん剥き、補助板として形状加工し間に敷くことで事無きを得ました。

このように途中予期せぬトラブルに見舞われることもありましたが、皆の努力の甲斐あって30分後には美味しいカリカリのタコ焼きを頬張ることができたのです。

障壁に出くわした時に、ありあわせの人、モノ、知識でどう乗り越えていくか。このプロジェクトは、そんなスタートアップでも起こりがちな成功体験すらも経験させてくれました。

まだまだ改善の余地は色々ありそうですが、リフロー炉の性能を正しく駆使すれば既存のタコ焼き器以上に美味しいものが作れる、可能性を示唆する結果となりました。

ご自宅で試したい方へ

リフロー炉でのたこ焼き調理ー。

技術と料理の融合によって生まれたこの新しい試みは、ただの奇抜な思いつきに留まらず、実際に美味しいたこ焼きを作ることができ、むしろ「徹底した温度管理」x「タコ焼き職人の腕前」によって従来のタコ焼き機では成し遂げられなかったカリフワ感を自在にコントロールできる可能性を秘めていることが示唆されました。

しかし、リフロー炉は一般的なキッチン機器ではなく、
価格も高価で手に入れるのが難しいかもしれません。

なので、この「リフローたこ焼き」をご自宅で試したい方はこういった商品が価格も安く、入門としてオススメです。

今回はアリエクで買ったこちらを使用しました。

が、同価格帯同性能でAmazonで取り扱いがあったのでちゃんと届くか不安な方はこちらがおすすめです。

リフロー炉でたこ焼きを作るという経験は、技術愛好者や冒険心旺盛な料理好きには魅力的な挑戦でありより新たな味わいと体験を求める人々にとっては非常にエキサイティングな試みです。

リフロータコ焼き師としての腕が上達したら、より高価なリフロー炉の購入にステップアップしていきましょう。

まる。
まる。

おれたちはいったいなにと闘っているんだ。

このプロジェクトが、料理とテクノロジーの可能性を探る一歩となり、これからも様々な実験が試みられることを期待しています。

皆がたらふく食い荒らした後もひたすら余った卵やらで何かを焼き続けるタコさん。パネェっす

まとめ

できた!!!

人類は月面にも立てたし、リフローでタコだって焼けた。

だったらきっと、宇宙でタコだって焼けるはず。

20年後の未来、「宇宙タコ焼き」が盛りあがっているであろうことが、今から待ち遠しいです。

ノリと勢いで書いたらなんかロ〇ットニュースさんみたいな記事になってしまったけど、楽しかったので満足。

こう見えて普段はちゃんと皆さん、走行する腹筋ローラーをつくってたり、ソレノイド(プッシュする機構)を喋らせたりしています。彼らの名誉の為に、単なるおふざけ集団ではないことをここに明記しておきます。

ひん剥いたアルミファンの厚みをデジノギに頼らず目視で測り競い合うmakerたち

うら若き天才発明家達..彼らの将来が楽しみです。

私も来年ソレコンでようかな。🥺

まる。

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Python歴5年のフルスタックエンジニア&ヨギー。
大学は心理学専攻、趣味はヘルスケア全般。
最近は自作脳波デバイスの設計とそれを使ったインタラクティブアート生成に勤しみ中。

↓アートとか日常。
Instagram:@malmal0v0

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