漠然とRaspberry Piを使って何か「電子工作をやってみたい」、「プログラミングをやってみたい」と思っても何が作れるのか、何を作りたいのかがわからなければ、その一歩を踏み出すことができないですよね。
この記事では、
- Raspberry Piで出来ること
- 機能を使った作品例
- 製作難易度やセンサなど必要パーツ
について解説していきます。
Raspberry Piに備わる機能・追加できる機能
Raspberry Piは何も追加パーツを購入しなくてもプログラミングのみでできるモノもありますし、モジュール(パーツ)を追加し拡張することも可能です。
下記にRaspberry Piに内蔵されている機能と、パーツを追加して出来る拡張機能についてまとめてみました。
などができます。
これらを組み合わせて自分が作りたい作品を作っていくわけです。
こんなモノも作れる!ユニークな活用事例11選
Raspberry Piは工業分野での温度や距離などの測定や、アナログ制御していたものを電子制御化する技術として使われていたり、エンターテイメントの分野でメディアアートなどに広く活用されていたりしますが、具体的にどんなものが作れるのかイマイチイメージが湧きませんよね。
本記事では、電子工作の初心者のお手本になるような「個人で制作している独創性に溢れた作品」というテーマで、国内外から幾つかRaspberry piを使った作品をピックアップしてみました。
こういったものが作れるんだ、という参考にしていただければ幸いです。
ドローンを自作
Raspberry Piを加工してドローン作りに挑戦している動画を2つご紹介します。
まずは、海外の少年が10年以上前にRaspberry Piで自作したドローンです。
当時はRaspberry Pi Zeroが無かったので無印のRaspberry Pi(モデルB)を使用していたのではないかと思います。
また、おそらく電源がドローンに搭載できず、コンセントから電源を取っているのでケーブルが外に飛び出ておりドローンを引っ張りあげているように見えます。
試作段階の動画ではあるのですが、10年前の10代の少年がこれだけのレベルのモノを1から作成しているということが素晴らしいと思います。
きっと、当時は今ほどキットも充実していなかったでしょうから、色々なパーツを試行錯誤しながら作ったのでしょう。
これを見ているだけでモチベーションが上がってきます。
続いての動画はAIを搭載したドローンの開発映像です。
メインで使われているPythonという言語はAIとの親和性が高く、Raspberry Piには非常に簡単にPythonをプラグラミングできる環境がそろっています。
この動画の製作者は、カメラモジュールから道を認識して、マッピングするということを目的に制作しています。
AIを使わず、ただドローンを作ろうと考えるのであればばRaspberry Pi Zero とドローン用の小型モーターがメインになるでしょう。
また、姿勢制御用のセンサー(ジャイロセンサー)はドローンには必要不可欠です。
ジャイロセンサーとは、機体の傾きを検知するためのセンサーで、3軸と6軸、9軸のモノがあります。
ドローン用に使われているのは、6軸か9軸のモノが多く、6軸が安いモノで約1200円ほど、9軸もほぼ変わらない値段で販売されています。
6軸はMPU6050、9軸はMPU9250辺りが有名です。
6軸ジャイロと9軸ジャイロの違いは、「方位」に対応しているか否かです。
簡単に言うと、6軸では角速度と加速度というものを基準にセンサーが3軸ずつ合計6軸で搭載されています。
9軸はさらにコンパス(方位磁石)を基準に傾きを検知している「方位センサー」というものが3軸追加されています。
言わずもがなですが、9軸の方が基準が1つ多いので、より繊細にコントロールすることが可能です。
内部構造は、その場にとどまること(ホバリング)ができるようにジャイロセンサーの傾きに合わせて、各方向のモーターの回転数を調節することが求められます。
このプログラミングを完成させるのが至難の業で、しかもドローンそれぞれの微妙なクセや重さ、重心など見抜き繊細な調整ができる技術も必要です。
ですが、ラジコン作りが好きで、細かな調整が得意な方でしたら、試してみるのも面白いかもしれません。
また、屋外で飛ばすために防水機能をつけたいのであれば、キャノピーと呼ばれる雨よけが必要ですし、カメラを搭載するなら専用のモジュールが必要です。
さらに日本の法律上、ドローンには様々な規制があるので、重さや飛ばす場所などレギュレーションは必ず守りましょう。
スマートミラー
鏡に天気予報や気温、時間が映し出されているスマートミラー。
デザイン性に優れていてかっこいいですが、作りは非常にシンプルです。
実は液晶モニターに張るとマジックミラーになるフィルムをかぶせているだけ。
つまり、マジックミラーの後ろにモニターが隠れています。
時計や天気予報などは、有識者が作ったプログラムを実行して貼り付けているだけです。
普段は鏡として使ってもいいですし、ネットサーフィンやYouTubeなどの動画を楽しむモニターとして使うこともできます。
使わなくなったモニターを分解して使うのが一番安く済みますが、電子工作初心者が作るならならモニター自作キットなどを活用するのがオススメです。
プログラミングだけでなく、日曜DIYとしてのスキルも活かされています。
センサー式自動噴霧アルコールスプレー
ウイルス対策のためにアルコール除菌を使うのは常識ですが、今では多くの商業施設の出入り口にセンサー式のアルコール噴霧器がありますよね。
その噴霧器をRaspberry Piで再現した人もいらっしゃいます。
噴霧器は複数人がポンプを触る心配がなく、感染リスクを下げやすいというメリットがあります。
やはり、ご家族の感染のリスクを考えると、あまり複数人が同じものに触れない方が良いと考えるのが普通ですよね。
特に、消毒液のポンプは帰宅して汚い手のまま触れる可能性もあります。
殺菌するものが菌の温床になってしまう、まさに灯台もとぐらしなので、このようなIoT機器を自作してみるのもよいのではないでしょうか?
材料は、距離(超音波)センサーとサーボモーターがメインです。
動画では、ポータブル用にモバイルバッテリーで電源を取っていますが、置く位置が決まっているのであればコンセントからの電源でも問題ありません。
またこの作品は、Raspberry PiとArduino(互換機)を併用して使っています。
というのも、サーボモーターの電源をRaspberry PiのGPIOから取ると電源が安定しないのであまり推奨された方法ではありません。
そのためこの動画ではArduinoを使っているのですが、電源が安定しないという理由だけでArduinoを使うのはもったいないのです。
なので、それ専用のサーボモーター用の制御ユニットというがおすすめです。
これだと、Arduinoよりも安価に同じ役割ができ、サーボモーターの制御もRaspberry Pi上で完結します。
詳しい制作風景は、ぜひ動画をご覧ください。
オンライン広告をブロックするサーバー
こちらはRaspberry Piのみで作ることができ他に何もいりません。
詳細や原理などは動画にて詳しく解説されているのですが、かいつまんでお話すると、
「Raspberry Piを使って広告のみをはじいてくれる『広告ブロックサーバー』というものを作り、ネットサーフィンや無料ゲームの広告をブロックすることができる」という代物です。
一般的な広告ブロックツール(Chromeの拡張アドオン、Adblockなど)は、簡単に言うとツールで広告の読み込みを停止させています。
そのため、WEBサイト側に広告がブロックされているという情報が伝わっています。
なので、一部のサイトでは、広告ブロックツールを入れているとサイト自体が閲覧できなくなるなどの対策が取られています。
しかし、この作品の場合サーバー側で広告の読み込み自体を阻止しているので、WEBサイトに広告をブロックしていることを検知されません。
広告をブロックしていたらサイト表示を行ってくれないWebサービスなどに対して有効と言えるでしょう。
ただし、YouTubeやTVerといった動画の広告はブロックできないとのことなので、あくまでアプリゲームやブラウザ閲覧中の広告のブロックに用途は限られるようです。
冷蔵庫の中身を自動撮影
スマート家電(IoT)の中には冷蔵庫の中にカメラが付いていて、いつでも中身を確認できるものがあります。
それを再現した方がいるのですが、冷蔵庫内にカメラを仕込むことは容易ではありませんよね。
なので、冷蔵庫の外側にカメラを取り付け、冷蔵庫(動画ではサンプルとして収納BOX)を開けた瞬間に写真を撮るという作品になっています。
動画を見る限りでは、おそらく磁気センサーを使っているのではないかと思います。
白い導線につかなっているのが磁気センサーで、このセンサーの磁気が離れると、数秒後にカメラモジュールにて写真を撮影。
その後、その写真を指定したLINE宛てに送るというプログラムです。
非常に高度なIoT電化製品をここまで簡略化して製作できるのは、製作者の発想力・アイデアの賜物だと思います。
補足としては、この磁気センサーを距離センサーやカメラの動体検知機能などで代用してもよさそうです。ただ、誤動作が多くなってしまう可能性があるので、その意味でも磁気センサーが適しているのかもしれません。
磁気センサーは、Amazonにて3個セットで1,000円ほどで販売されているので、手軽に入手できます。
火災報知器
Raspberry Pi(厳密にはPython API)の機能にLINEなどのSNS連携機能があるので、センサーで火災を検知しLINEで通知するという割と簡単なプログラムで動いています。
技術的な話は煙センサーを使って一定以上の煙が検出された場合は、指定のLINEにメッセージを送るというプログラムで動いています。
例えば煙ではなく温度センサーを使って一定温以上部屋が暑くなったら(例:家事で室温が60℃を超えてしまったら)と、センサーをより安価なモノに変えることもできそうです。
また、厳密に言うなら補助電源は常時無いと火災報知機の意味がありませんし、有線・無線どちらでもいいので、ネットにつながっていないとLINEを送信することができません。
火事の場合、最悪ブレーカーが落ちている可能性や、モデムやケーブルが燃えてネット環境が使えない場合もあるので、より実用性を目指すならUPSなどの非常電源の利用や、WiFiでなくSIMカードでの通信にするとよいでしょう。
見守りカメラ
お子様、ペットの見守りカメラの価格は最近下がってきており、簡単に買える時代になりましたが今一つ痒いところに手が届かないと感じたことはありませんでしょうか?
例えば、決まった人物だけ追尾するカメラや、視野が広く180°回転しスマホから遠隔操作ができるようにしたい、など用途に合わせて必要なカメラの性能も変わってきます。
Raspberry Piを使えば、サーボモーターを複数組み込むことができるので特定の人物を追尾するカメラや大きく首を振ることができるカメラも簡単に製作可能です。
他にも、カメラとPythonを使ったAIの機能を組み合わせれば、例えばペットのフンを検知し決まった場所以外でフンをしている場合はLINEで通知する機能なども開発してみるとおもしろいかもしれません。
AIとの組み合わせで言うなら、個人的にはロシアの南ウラル国立大学のIldar Rakhmatulin氏が制作した、機械学習で蚊を自動検知してレーザーで焼殺するRaspberry piマシンが好きです。(笑)
ストリーミングパッド
製作者の紹介では、ストリーミング配信中にカメラや画面の切り替えという用途でご説明していますが、マクロキーボードとしてもつかえます。
例えば、コピー&ペーストが1つのキーで出来たり、IllustratorやPhotoshopの「一つ前に戻る」、「レイヤーの複製」といったショートカットを登録した独自のキーパッドを作ることができます。
材料は、専用のキットと別売りの有機EL(OLED)モニターです。
難点としてはケースがないので、動画では3Dプリンターで出力していましたが、無い場合は裸か木材などで作らなければいけません。
また、部品の接続で一部はんだごても必要になります。
キットにつきましては下記に動画で紹介されているキットと同じものが販売されていたので参考にしてみてください。
有機ELモニターは、下記などで代用可能です。
また、こちらの記事では黒電話をキーパッドとして改造した例が紹介されているようです。
録画した番組を出先で見る
今はやTVerで色々なテレビの番組を無料で見れるようになりましたが、最新話のみ見れる仕様なので過去の話が見れなかったり、一部配信していない番組があります。(有名なところだとアメトーークなど)
FODやテラサなどのサブスクで済ませることもできますが、複数契約すると結構な月額となりますよね。
そこで、代替手段として自宅でネットワークドライブに自動録画し、外部から視聴するという方法があります。
しかし、出先から自宅のNASにつなげて録画番組を視聴できる機能があるレコーダーは品薄または、高価で手が届かないことも多いです。
そんな方のために有識者様がRaspberry PiとNASを使って同じような構成を自作、紹介されています。
乗り越えなければいけない壁が2つあり、形式変換とNASへの自動転送です。
Raspberry Piでテレビを見るようにすること自体は割と容易です。
アンテナ線につなげられる部品とB-CASカードを挿入できるような部品があればテレビの視聴と録画も可能です。
しかし、問題は持ち運びができるようにするという所で、スマートフォンで視聴するのであれば録画番組の形式はmp4などに変換しなければいけません。
さらにその録画番組を変換した後に、NASに転送するという手順が必要です。
Pythonでffmpegなどのライブラリを使えばmp4へのコンバートは楽勝なので、あとはアップロードを自動でネットワークパスに飛ばすだけです。
上記開発者様のサイトにて詳細が解説されているので、興味がある方はチェックしてみてください。
野菜で音楽を奏でる
MPR121というタッチセンサーを使っており、野菜を叩いた時の音を検知してPythonから出力させる作品。
“Beat”と”Beet”とかけたシャレた作品となっていて、発想も中々にオシャレです。
Pythonでは、Pygameというゲーム用のライブラリが使用されています。
ツイートの感情を水晶に可視化
TwitterのStreamingAPIを用いて収集したツイートの内容をもとに、形態素解析などを通じて感情の分析を行いそれを水晶に投影する作品です。これはおもしろいですね!
よく見ればわかりますが、実はこの水晶も自作で中に綿を詰めたプラスチック球となっています。アイデアでここまで形にしてみた、という勢いが凄いですね。
定期的にタイムラインのツイートを解析させて表示させるだけで、水晶球にその日のみんなの感情が色や明るさとなって表示されるようです。これは1家に1台欲しいコンテンツ。。
まとめ
Raspberry Piは、アイデア次第で様々な活用が可能です。
紹介した作品例に使われている技術を組み合わせても、発想次第で全く新しいものを作ることも可能です。
また、本記事で紹介したもの以外にも、たくさんのモジュールやキット、APIがあるのでまだ初心者で勉強中、という方は色々と試してみてもいいかもしれません。
安価に始められるのはRaspberry Pi ZeroやPico専用のキットで、modelBシリーズのようなパフォーマンスは出せませんが、低コストでの組み立てに向いてます。
本記事でご紹介しているストリーミングパッドはPicoと専用のキットで作られています。
価格もPico本体含め5,000円以内で実装することが可能ですし(本記事執筆時点)、パソコンを利用していてショートカットを使用する機会が多い方は持っておいて損はありません。
難点としては、Raspberry Pi PicoはOSを本体で持っていないため(パソコンではなくマイコンである為)、お手持ちのパソコンに繋げて開発を行う必要があります。
なので、「安価で開発したい」「既に自宅にパソコンがある」という、方におすすめです。
(スペックはそんなに高くなくて大丈夫です)
1台で完結させて開発したいという方はmodelBシリーズのRaspberry Piがオススメです。Picoに比べると値段は張りますが、USBポートなどが元から搭載されている為ディスプレイとキーボード・マウスをケーブルから挿すだけで認識してくれて、また、別途PCがなくてもセットアップできるので、初めての方にはこちらの方が無難かなと思います。
大きさ、スペックなどやりたいことに合った商品を選ぶのが大切です。
詳細なシリーズ比較についてはこちらの記事で紹介していますので、ご参考ください。
また、各種制作に必要となるスイッチの種類については、以下の記事で紹介しています。
素材の選定は制作に取り掛かる前に済ませておくとストレスなく作業できます。
是非ご覧ください。